口頭発表パネル 教育研究・発達支援研究・メディア研究から見たTRPG・LARPの可能性

3日目
09:00~11:00

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当日受付

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9:00〜11:00
「教育研究・発達支援研究・メディア研究から見たTRPG・LARPの可能性」
教育学や心理学、社会学などの分野でTRPGやLARPを通じた研究・実践を進めている国内外の研究者が集まり、それぞれの研究を紹介しつつ、RPGの新たな可能性を探ります。

 

 

口頭発表パネル 9月2日(日)

タイトル:「教育研究・発達支援研究・メディア研究から見たTRPG・LARPの可能性」

 

○海外ではTRPGやLARPを題材にした研究が、様々な領域で積極的に取り組まれています。そこで今回、TRPGフェスとしては初のアカデミックなトークセッションを企画しました。教育学や心理学、社会学などの分野でTRPGやLARPを通じた研究・実践を進めている国内外の研究者が集まり、それぞれの研究を紹介しつつ、RPGの新たな可能性を探ります。

 

発表概要・発表者紹介

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発表1:TRPGを通じた自閉スペクトラムのある子どもたちのコミュニケーション支援

自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもは、知的な遅れがなくても、社会的コミュニケーション、特に同年代との対人関係や仲間づくりや集団活動に困難を抱えるといわれる。発表者は、TRPGを通じた発達障害のある子どもたちの余暇活動支援に長年取り組んでおり、一連の研究論文の中で、TRPGを楽しむ中で子ども間の社会的コミュニケーションにポジティブな促進が見られたことや、子どもたちの生活の質(QOL)、特に自己肯定感や友人関係などの項目が向上したことを報告している。当日のパネルでは、これまでの実践および研究の結果を紹介しつつ、TRPG活動の効果と可能性について発達支援の観点から考察する。

 

加藤浩平(かとう・こうへい)

東京学芸大学教育学部研究員(教育学博士)、編集者。心理学・教育学の専門書の企画・編集に携わる一方で、大学や地域で、TRPGを通じた発達障害のある子どもや青年たちの余暇活動支援・コミュニケーション支援の研究に取り組んでいる。著書(共著)に『自閉スペクトラムの発達科学』(新曜社)、『発達障害のある子の社会性とコミュニケーションの支援』(金子書房)などがある。

 

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発表2:「Nordic Larp」入門:芸術・政治的な教育LARPの理論と実践

「Nordic Larp(ノルディック・ラープ)」という考え方が約10年前から発展している。「Nordic Larp」とは、芸術的な展望、政治的なメッセージ、または教育の目標のある洗練されたLARP経験を目指しているフレームワークである。北欧に由来しているが、現在は南アメリカからシリアまで適用された考え方になっている。

本発表では、「Nordic Larp」の背景と基本的な説明の上、主に成人向けのLARPの実践例に基づき、娯楽+αを目指すLARPのデザインや理論、「ブリード」と「没入感」をはじめ、その専門用語やアイディアを紹介したい。

 

ビョーン=オーレ・カム

ドイツ・ハイデルベルク大学で日本文化博士号取得し、現在は京都大学文学研究科文化越境講座講師。メディアの使用、ジェンダー論、それに社会的な包摂と排除の過程などが研究関心であり、現在はアカデミックな文脈でのLARPを通しての学習の可能性を探究している。若者向けLARPの主催経験もあり、ドイツLARP協会研究会幹事員でもある。

13 : 18 Hochformat

 

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発表3:LARPを用いた地元地域の子・若者社会福祉活動、ドイツの事情を例に

教育ゲーミングの取り組みはドイツで増えつつある。障害の有無にかかわらず、様々な社会的異文化背景を持つ子供や若者のための地域社会福祉活動でも一般的な方法となっている。ロールプレイングゲーム、特にLARPを用いて、学校現場での無気力、性同一性、インクルーシブ、政治教育、メディアリテラシーを含み、大切な問題・テーマに対する非常に個人的かつ感情的なアプローチを可能にする。責任を持ってメディアを理解し、かつ使用するために、ドイツのメディアリテラシーのアプローチは、教育RPGのストーリーテリングの側面にスムーズに統合できるインフォーマルな「体験による学習」という方略を積極的に活用している。

本発表では、都市部のメディアカルチャー教育に焦点を当てた地域の青少年活動の方法としてLARP及びLARPの要素を用いた最近のドイツでのプロジェクトを紹介する。同時に、地元地域の子・若者と一緒にLARPを実施する社会福祉士の概念的な課題は何か、メディアリテラシーの概念はRPGの経験にどのように適合しているかについて検討する。

 

デニーズ・パシェン

ドイツ・ミュンスター大学社会人類学の大学院生であり、社会福祉士として公民館の子供や若者のためのメディア教育者として働いている。ドイツでの日本マンガの愛読者への教育的影響について学士論文を執筆し、現在、ポップカルチャーメディアにおけるストーリーテリングの教育的・治療的側面について研究しながら、ミュンスター専門大学の教員として教育現場でのメディア教育に取り組んでいる。

 

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司会:石田喜美(いしだ・きみ)

横浜国立大学教育学部准教授。専門は、メディア・リテラシー教育。腐女子コミュニティから、水戸芸術館「高校生ウィーク」まで、子ども・若者の活動がはじまる場のありかたに着目した研究・実践を行う。近年は、常磐大学ゲーミフィケーション研究会として、ゲームデザインを応用した教育プログラムの開発を行っている。著書(共著)に『越境する対話と学び:異質な人・組織・コミュニティをつなぐ』(新曜社)などがある。

 

■発表概要・発表者紹介:PDF 【TRPGFest2018_0902_Talk_RPG-Research

 

■イラスト(c)2014:べに山べに子